ここには、28355!のカードをデザインする際に何を考えたのか、といったことについて書いておこうと思います。
やりたかったこと
28355!を作ろうと思い立ったのが2018年の夏、その時点ではシャニマスの同人カードゲーム(ボードゲーム)はまだ存在していませんでした(少なくとも自分の検索範囲では)。また、シャニマス自体の人気も今ほどは無く知る人ぞ知る…というかプレイヤーは本当に少ないものでした。存在は知っていても、CDは買っていても、イラストは見たことがあっても、ゲームをやっていない人ばかりだったんですね。
この辺の転機は明らかに1stLIVEで…という話はさておき、そんな状況の中でめざしたのは「シャニマスを知ってもらうゲームを作ろう」というものでした。カードデザインもそれを踏まえたものにしています。
レイアウト
本ゲームでのカードは手札を経由して手元に置かれていきますが、ドラフト中はずっと手に持っているのでその視認性に気をつけました。
大半の人が持つ持ち方であれば情報は左上に寄せておくと重ならずに見やすいので、必須情報は全て左上に寄せました。
・カードジャンル(Vo/Da/Vi)
・名前(センタリングでは無く左寄せ)
・ユニットの人数
・ユニットアイコン
・Skカードの効果テキスト
例えば名前は名字の1文字目でほぼ判定できますし(大崎家は2人いますが)、ユニット名はアイコンを置くことで情報を圧縮できます。人数を隣に置くことで何人集めるとユニットが完成するのかがわかります。
逆に、右上が見える様な持ち方(左利きに多いのかなと思いましたが、そうでなくてもこの持ち方する人もたまにいますね)の場合にも、カードの枠の色でジャンルが分かるしユニット名は見えるのでユニットは判別できます。見にくいですけど。
今回、ユニットアイコンデザインやカード全体のレイアウトはマテリアルデザイン的というかフラットデザイン的というか、シンプル目にしています。リッチな装飾は使いませんでした。狙ったのが半分、凝った装飾なんて自分では作れないというのが半分です。自分にできる、自分の好みなデザインに寄せました。
カード名
カードのデザインでやりたかった点の一つに「名前にルビを振る」があります。初見の人はまず「恋鐘(こがね)」は読めません。「風野」は「かざの」?「ふうや」?「灯織(ひおり)」は特殊な読み方と勘違いされない?「幽谷(ゆうこく)」もちょっとあやしい。
今回はシャニマスにほとんど触れてこなかった人にも向けているゲームなのでここはこだわって、ルビも少し大きめにして読みやすくしました。本当はローマ字も入れてみたいなと思っていたのですが、さすがにそのスペースは無かったので諦めました。このゲーム、固有名詞以外はほとんどカードテキストも無いので楽に英訳できそうなんですよね。需要がもしかしたらあるかも?さすがに無いか。
後述しますが、ユニット名にもルビを振りました。「L’Antica(アンティーカ)」はかなりきびしい。これにルビを振るなら全てのユニットに振った方が統一感をとれます。さすがに「放課後」には振っていませんが。
ユニット情報
ジャンル枠を3色に振り分けているので、ユニット情報枠とその内側の要素は逆にモノクロで統一しました。
ユニットアイコンは本家に寄せつつ、それっぽい感じのアイコンにしてみました。極論、ユニットが違うというのがはっきり分かればユニットの頭文字とかでもいいんですが、ちょっと絵文字的にすることでイメージしやすくなる効果を狙っています。
ユニットアイコンを本家の色に寄せずに黒1色にしたのは先述の理由もそうですが、もう一つ理由があります。こちらのゲームはVoDaViのジャンルが対称になっていてユニットがこのジャンルに強いみたいな要素は無い仕組みにしたので、ユニットアイコンに色が付いているとその点で誤解されてしまいそうだったためです。
英字ユニットにはアイドル名と同じようにルビを振りました。先述したようにアンティーカがちょいきついかなと思ったので。
ユニットメンバー数の数字はもう少し太字にするか縁取りしたほうがよかったかも。
カードの枠とジャンルカラー
カードには枠で縁取りすることにしました。左上に置いたVo/Da/Viのジャンルアイコンと合わせて、そのカードがVo/Da/Viのどれなのかをはっきり印象づけるためです。また、どのように持ってもすぐにそのカードの色がわかるようにという意味もあります。このゲームでジャンル(色)は重要な情報なので。
ただ、これは少し失敗したかも…と今でも悩んでいる点でもあります。というのも、カードを重ねて山札を作ると横からカードの色が見えてしまうんですね。幸い、ゲームルール上は山札の色がなんとなくわかったところで特に意味は無いので、ぎりぎりなんとかなったかな…という感じです。
細かいところですが、カード内の枠の角丸の半径と、カード自体の角丸の半径は連動させると見栄えが良いと思います。これは同じ半径にするのでは無く、内側の枠の角丸半径は外側より少し小さくするという意味です。
角丸に限らず、余白の制御や文字サイズ、配置、フォント選びは結構がんばったつもりです。装飾で凝れない分、そういうところでポイントを稼いでおく作戦です。
アイドルイラスト
28355!は構想・試作した2018年夏時点で、頒布目標に決めた2019年2月歌姫庭園時点でもおそらくシャニマス初の同人カードゲームになるだろうと予想していて、それを狙ってもいました。
そこで、まずイラストは公式と差別化することに気をつけました。公式がゲームを出すとすれば(バンナムから出るにしても、ヴァイスなど既存ゲームのコラボにしても)それは間違いなくゲームイラストをそのまま使ってくるはずです。つまり頭身高めのイラストで出てきます。それとかぶらないようにしたいと考えました。
それを実現するため、デフォルメ調なイラストを描かれる2人の同人作家(イルミネ・アンティーカ:あゆみトオル様 @aym10R / アルスト・放クラ:みやまき様 @_miyamaki_sm_ )に依頼しました。
※先述の理由が半分、自分の好みのイラストでゲームを作りたい、というのが半分。
大事なアイドル衣装も、奇をてらわず全員ユニット初期衣装で発注しました。わかりやすさ第一です。奇をてらうも何も、開発当時は2周目実装はほとんどいませんでしたが。夏に企画して冬に出すという時間勝負なところもあったので、ここでオリジナル衣装をデザインしてもらうよりは参考資料が豊富にある既存の方が良いというのももちろんあります。
上がってきたイラストは大変かわいく仕上げて貰い、狙い通り似た様な感じで全体の統一感も取れました。自分は複数イラストレーターのギャルゲーは好みではありません。1人か2人がちょうどいいですね。
背景は発注せずノンパターンでしたが仮配置してみるとさすがに簡素すぎてさみしかったため、ちょっとグラデ的なのを入れてみました。ださいかなーとも思いましたが、本家がおしゃれなので対照的になったんじゃないでしょうか(ポジティブ感)。一応背景の色はユニットカラーに合わせています。あと、背景にグラデ帯入れるのはちょっと昔のスパロボを意識していたりもします。
ジャンルカラー(印刷)
自分の技術ではどうしようもなかった点として、実際に印刷されたジャンルカラーの色調があります。
Voのピンク、Daの青は概ねイメージ通りの色を出せたのですが、Viの黄色はちょっとイメージと違ったかなと感じました。多分RGB入稿したのとかそういうのが関係してるはずなんですが、直す手段は無かったので黄色になってるならいいやとそのまま通しました。
事前に調べて知ってはいましたが、やはり画面と印刷では全然違うしテスト印刷に使ったコンビニ複合機と印刷会社での印刷も全然違いますね…。
できあがり
結果として、VoDaViのカードはアイドルの名前とイラスト、所属ユニット情報、そして3色のジャンルだけという簡素なものに仕上がりました。これが3/4を占めており残り1/4のSkカードも大した違いは無いので、全体としてもあっさり目なデザインになりました。
これは10分~15分で終わるゲームなので、この方向性で間違っていなかったと思っています。カードを沢山並べるゲームなので、沢山並べた時にその簡素なのが沢山集まってちょっとカラフルに見える…それくらいでいいのです。