ここでは、28355!のスキルカードをどうやって作ったか、どうしてあのような効果になったのか、といったことについて書いていこうと思います。
一応28355!プレイ済みの方に向けた記事となっています。
スキルカードについて
シャニマスでは自分のプロデュースするアイドルがオーディション審査員に対し、他のライバルアイドルよりどれだけ「アピール」できるかで勝敗が決定されます。アイドルは初めは自分のパラメータを基準として「1倍」のアピールができますが、ゲーム中獲得できるスキルで2倍、3倍、それ以上のアピールができる様になっていきます。
28355!もそれをイメージして、オーディション審査ステップでの発揮値計算時に特殊なカードで発揮値を大幅に上げられるようにしました。
スキルカードの効果(Sk効果)の基準は「カード1枚でジャンル1つに+3と少し」です。通常のVo/Da/Viカードがそれぞれのジャンルに+1なので、その約3倍というわけです。
この数値には幾つか理由があります。
- 原作ゲームのイルミネーションスターズ初期pSSRが持つアピール効果が「Vo3倍・Vi3倍アピール」(櫻木真乃の場合。めぐる、灯織はジャンルのみ異なり倍率は同じ)だったから。
→実際のゲーム中では1人の審査員に対しVo3倍アピールとVi3倍アピールを同時に行います。ゲームの仕様上ジャンル違いのアピールは効果が半減するため、合計でざっくり3+1.5=4.5倍のアピール(パラメータがジャンルにより突出せず平均的な場合の概算)になるのですが、そういう細かい仕様は置いておいてわかりやすく「3倍」という数字を使いました。 - パラメータの数値空間をダイスの範囲に収めたかった。
→開発初期段階ではゲーム処理にダイスを使うことも考慮に入れていました。ダイス1個で得られる期待値が3.5なので「+3と少し」というわけです。この基準は現在の製品版でも守っているので、いずれダイスで何かできるようにする時にもスムーズに導入できるでしょう(その予定はありません)。 - 通常カードより強いカードにしたかった。
→通常カード(Vo/Da/Vi)はそれぞれジャンルに+1です。ゲームルール上、プロデュースアイドルにすることでさらに+1されます。言い換えれば、このゲームでは全てのアイドルが初期状態で「+2」の発揮値を出せる可能性を持っています。
スキルカードはこのゲームのカードのウリなので、それよりは強くしたかったのです。
ただ「+3」を基準にするとSk効果に幅を持たせるに当たり「+2」が生まれそうだったので、それよりは少しだけ基準を上げて「+3と少し」です。
上記の基準に加え、「通常カード同色5枚で生み出せる発揮値6に対して編成の最低枚数2枚では同点にできない」という上限も設定しました。
2枚編成はオーディション審査以外で勝利点を得る手段の「プロデュースユニットボーナス」を狙おうとする段階で(特に5人ユニット狙いの時に)頻出します。いくらSkが強いと言っても、余りにも通常カードと剥離してしまってはいけないし、オーディションに出ることを目的としない編成がそれに勝ってしまってはいけないと考えました。通常カードだけでも勝てる余地(実際にそういう状況になることはほとんど無いでしょうが)を残しておかなくてはいけません。
さて、この前提を踏まえた上で各スキルカードの効果を見ていきましょう。
イルミネーションスターズ:得意レンジ…小編成
イルミネのカード解説に合わせて、「サイクル」について説明しましょう。
28355!では登場する3ジャンルVocal/Dance/Visualを有利不利の無い(そして3すくみでもない)対照的なものとして扱っています。
イルミネ3人のSk効果は真乃が「Vo+3/Vi+3」、めぐるが「Vo+3/Da+3」、灯織が「Da+3/Vi+3」と、ジャンルだけ異なる同じ効果として設定しています。この「効果の構造は同じで色だけ違うシリーズ」をサイクルと呼んでいます。
ゲーム上、審査時にはジャンルは1つしか使わないので2色に加算されても直接的な意味は無いのですが、
・Voとして育てようとしたら意外とViが伸びた
・Voとして育てたけど別の編成でもっといいVoができた
・Voのアイドルをプロデュースアイドルとして公開したがそれはひっかけで実はViが強い
といったケースで便利…という間接的な効果があります。作成済み編成に手を加えられる唯一の方法として用意した【チェンジ】とも相性が良いです。
この2色補正というメリットを、審査自体には多色は全く寄与しないことから「+1未満」として評価しています。
ユニットが3人なのでLINKアピールが使いやすかったり、そのLINKで色を重ねられると爆発的な効果を得られたり(Sk2枚で発揮値14!)、と初心者から上級者まで誰にでも使いやすい効果と言えるでしょう。
アンティーカ:得意レンジ…中編成/多色
アンティーカのSkサイクルは「サポート1枚を裏向きにして+4」。+3よりは1強いけどデメリット持ちというデザインです。
(カードを裏向きにすると記述された全ての効果が失われます)
これは原作でアンティーカの面々がよく持っている「自身のメンタルを減らして大アピール」を表現しています。いわゆる「背水」です。
編成には大体1枚くらいは無駄なジャンルのカードがあったりするものなのでそれほどデメリットではないのですが、たまに綺麗に1色に揃ってしまい「もったいないけど…」という場面や、条件とユニット揃え(LINKアピール)を天秤にかける様な場面もでたりします。
条件として消費して問題無い(つまり必要ない)カードはVoDaViSkのうちジャンル2種とSkのうちほぼ半数(ジャンルが合わないもの)。全体のうち大体半分のカードが条件の候補になります。ここから、効果の数値としては+4だが期待値としては+3以上+4未満、と評価しました。
ドラフトでは相手にpアイドルを見られていることから別ジャンルカードを流されやすい傾向があることを考慮すれば、実戦ではほどよく使いやすい効果となっているのではないでしょうか。個人的には期待値+3.5よりはもう少し高く、+3.75くらいの印象です。
条件用カードをどうやって仕込むかのジレンマやテクニックを楽しんで貰いたいですね。
アルストロメリア:得意レンジ…大編成
アルストロメリアのSkサイクルは「サポート枚数を参照し枚数分プラス」。原作ゲームでこのユニットがよく持っている「メンタルが多いほど強い」スキルをイメージしています。カードが沢山あるほど強い。
カードを並べるだけでお手軽に最大+4できて計算も色関係無しに数えるだけで楽、しかもアルストは3人ユニットなのでリンクアピールもしやすい。アンティーカのように条件としてカードを1枚裏向きにしなくてもいいし、むしろアンティーカのSkで裏向きにしたカードも数えられる(「サポートである」ことはそのカードの表裏を問いません)。とても強力な効果だと思います。…しっかり4枚サポートアイドルを並べられれば。
このSk効果のウィークポイントはその「編成枚数によって発揮値が変動する」という点。ゲームに慣れてプロデュースアイドルユニットボーナス狙いが視野に入ってくると編成(プロデュースアイドル)を沢山作りたい、そうなってくると1つの編成に5枚も並べてしまう余裕が無くなってくるわけです。また、同じ3人ユニットのイルミネに比べると同ユニット内Sk効果のシナジーもありません。
カード単体の理論値は強いけれど実際に使ってみると発揮値+4の評価よりは少し下がる…という、いい位置に落ち着けられた効果だと思っています。
ちなみに、「編成枚数を参照」ではなく「サポート枚数を参照」になっているのは開発中調整のポイントの1つです。前者であれば最大+5、後者であれば最大+4。3人ユニットのカードなのであまりパワーカードにもしたくなく、後者を採用することで力を抑えました。
放課後クライマックスガールズ:得意レンジ…大編成/単色
放クラのSkサイクルは「ジャンル枚数とSk枚数を参照しその枚数分プラス」です。色を揃えればそれが実質2倍になるという強力な効果、しかし無駄なカードが混じってくると効果が全く伸びない。ハイリスクハイリターンな効果と言えるでしょう。
原作では放クラは「速攻」「強アピール」というメリットと「メンタルダメージが増える」「狙われやすくなる」というデメリットを併せ持つアイドルが多い傾向にあり、それを意識しています。
この効果もアルストと同じく、編成の枚数によって発揮値が上下します。アイドルのジャンルと関係ないSkカードでも発揮値に変換できるのはお得で、Skが同ジャンルのカードであればポテンシャル以上の能力を生み出すでしょう。編成が1色とSkで揃えられればカード単体で+5という強力カードです。
単体+5は少し強すぎともとらえられるかもしれませんが、アンティーカのSk効果の時にも書いた「ドラフトでは自分のpアイドルと別の色を流されやすい傾向」により、1編成5枚が同色+Skで揃うことはそれほど多くありません。実戦では+4を得られれば上出来なくらいでしょう。この不安定さを大きなデメリットと捉え、この数値で良しとしました。
結果として「沢山集まると強い」といった放クラっぽい特徴付けもできました。
5人ユニットのサイクル外アイドル
アンティーカと放クラは5人ユニットなのでイルミネやアルストのように3人でサイクルを組むと2人余ります。そこで、残り2人はジャンルを問わない特殊効果にするという方針にしました。
ここからは、5人ユニットのサイクル外となる2+2人の解説です。
白瀬咲耶:得意レンジ…小~中編成
「私は人をときめかせる存在でありたい」
イルミネの汎用性の高さをさらに伸ばしたのが《Sk白瀬咲耶》、アンティーカのサイクル外2人のうちの1人です。
Sk効果の「審査ジャンル+3」は、どの審査に出ても発揮値+3を得られます。ジャンルを気にする必要は無いという究極の汎用性です。
使い方としてはイルミネと同じポジションで、3色どれにでも対応できるという点でイルミネより優れています。ただ、カード単体としては確かに上位になりますが、イルミネにあるようなユニット間シナジーや 「5人ユニットなのでリンクに最低4人必要」という点で劣り、完全上位というわけでもありません。
補正値+3はちゃんとジャンルを合わせた編成ができた場合には少し物足りない数値なので、ゲームに慣れていない人向きの効果であるとも言えるでしょう。
杜野凛世:得意レンジ…オール
「凛世はいつも……プロデューサーさまの……おそばに……」
さて、もう一つ汎用性に対する別アプローチとして「pアイドルのジャンルに+4」を持たせたのが《Sk杜野凛世》。放クラのサイクル外の2人目です。
咲耶と同じようにジャンルを問わない効果でしかも咲耶より強い+4。しかし決定的に違うのは、
・pアイドルが審査ジャンルと異なっていた場合意味が無い
・《Sk杜野凛世》自身がpアイドルになっていると、Skカードはジャンルを持っていないので補正値が+0になってしまう
という強いデメリット。これは咲耶とうまく対照的にできたと思っています。プロデュースユニットボーナスを狙う際にはpアイドル自体のジャンルまではどうしても手が回らないことが多いので、実質の色拘束を持つこの効果を実戦で上手に扱いオーディション審査に勝つには先を見据えた編成構築が必要になってくるでしょう。
若干上級者向きの効果なので、発揮値は+4で良しとしました。実戦ではやはり慣れてくるとその辺の操作がうまくなってくるのか、咲耶より重宝されるケースが多いようです。
園田智代子:得意レンジ…大編成/多色
「審査では評価されないパラメータですからね」
咲耶や凛世に持たせた汎用性への逆からのアプローチとして「どうせドラフトのせいでジャンル揃えが難しいのならそれをメリットにできる効果を」と作ったのが《Sk園田智代子》の「VoDaViを全て編成するとVoDaVi+4」。
彼女は放クラのサイクル外2人のうちの1人で、もちろんモチーフにしたのは[純真チョコレート]の「VoDaVi40%アップ(70%アップ)」です。
(開発当時は pSSRは 未実装でした)
全ジャンルに補正を持つ代わりに、条件として3色全ての通常カードを必要とします。 アンティーカのサイクル効果「1枚裏向きにすると+4」 と比較すると「ジャンル外2枚使って+4」なのでカードパワーとしてはアンティーカより弱いのですが、アンティーカとは異なり裏向きにはせず表向きのまま効果発揮するのでリンクアピールに繋げやすい、という一面もあります。
ジャンルを問わず強化でき同じユニットでもある《Sk杜野凛世》とは特に相性が良いです。ちょこりんはいいぞ。
※拡張リリース時にパワーアップさせました。→《Sk園田智代子》について
田中摩美々:得意レンジ…?
「ふふー…どくばりー」
最後に、異色の「まみみアピール」を持つ《Sk田中摩美々》。1/7の確率でどのような編成でも1位を取ってしまうというギャンブルスキルです。
これの元ネタはもちろん原作のsSSR[ゴシックデコレーション]やpSR[夕つ方まみみチック]の「確率で審査員を一気に満足させる」、つまり一撃必殺のスキルからです。原作では体感で2%ほどの成功率でしたが、ここでは手順を工夫して1/7、約14%にしてみました。
このスキルはボードゲームとしての「お遊び」の部分であり、ドラフト・編成がうまくいかなかったプレイヤーへの「救済措置/逆転要素」でもあります。彼女にも何かしらの「普通」なスキルを持たせても良かったのですが、1箇所こういう要素を入れておくことでより「ボードゲーム感」が増すかなと考えて入れてみました。シャニマスをゲームリリース当初からやっていた方へのネタ振りの意味ももちろんあります。
(ゴシックデコレーションは初期のイベントカードなのでその頃からやっていたプレイヤーしか所有していないのです。一度イベント復刻したのでその時に獲得した人の方が多いかも?)
ただいくら逆転要素といっても、これで単独1位になることでがんばって編成した対戦相手が得られるはずだった勝利点を失ってしまうのはさすがに興ざめです。そこで効果テキストを工夫して「同点一位」までにしかなれないようにしてみました。摩美々で一発逆転はできないけど追いつけはするかもしれないので、もう少しだけ他の部分でがんばって!という感じに。
ちなみにこの効果は開発初期ではダイスロールしていましたが、このためだけにダイスをコンポーネントに入れるのは…ということでさすがにやめました。この手順(審査員カードと混ぜて1枚引く)にしたことで結果として「審査員に対するスキル」という原作チックな印象を強化できたので結果としては良かったのではないかと思います。
ところでLINKアピール発生時の手順(7枚から1枚引く。摩美々が引ければOK。引けなかった場合、今度は7枚からLINK人数分の4枚か5枚引く)での成功確率は、覚えやすい数字に丸めて約65%(LINK4)か約75%(LINK5)です。もっとざっくり6割か7割と覚えてもいいでしょう。
普段3%や5%のガシャ回してるプロデューサーさんならー、楽勝ですよねー?
効果テキストで表現するフレーバー
さて、Sk咲耶はどの審査でもそのジャンルに+3、Sk智代子は全ジャンルに+4、Sk凛世はpアイドルのジャンルが何でもそのジャンルに+4。どの効果もジャンルを固定していませんが、効果テキストは全て異なります。
これには、ゲームとは関係ない演出としての要素、いわゆる「フレーバー」の意味も込めています。
咲耶はクールでかっこいい立ち居振る舞いを常に心がけています。高身長でスタイルも良く、周囲から向けられる期待に自分を演出して答えているところがあります。 そういった性質は審査員に対しても向けられるモノであり、実際それを彼女はなんなくこなしてしまいます。
Sk咲耶の効果は智代子のように「VoDaVi+3」と書いても実質は同じですが、より「審査員から求められているモノを見せる」感を与えやすいように「審査ジャンル+3」という表現で彼女を記述してみました。
智代子がVoDaVi+4となっているのは、智代子の段でも書いたとおり元ネタの純真チョコレートに合わせたからです。
この2人の記述を変えたのは、今後の拡張の布石とする意味もあります。
(効果記述を変えることにより、どちらかのみを対象とする特殊な効果を作ることができるかも知れない…というもくろみ。今のところそのような拡張を出す予定はありませんが…)
凛世の効果「pアイドルジャンルに+4」も原作要素を意識した仕掛けがあります。
凛世はそれはもうプロデューサーにぞっこんでずっと側にいてプロデューサーのことなら何でも従ってくれる…そんなちょっとしたあやうさ(ちょっと?)を表現したのがこの「他者に合わせた色変え」です。プロデューサーの指示する「この編成でpアイドルをサポートしろ」に盲目的に従ってしまうんですね。
そしていざ自身がpアイドルになるとどう自分を表現して良いか、自分はどのようなアイドルになりたいのか、迷ってしまう…(そして発揮値+0になる)。
Skカードはジャンルを持たない、というルールも使って凛世を表現してみました。
得意レンジについて
各段落タイトルに唐突に「得意レンジ」と書いていましたが、それについて説明しましょう。
開発中、スキル効果の検討中には「編成が2~3枚の小編成」から「編成が5枚の大編成」まで、それぞれ全体でどれくらいの発揮値が見込めるかの期待値計算もしています。カード効果を変えるのはもちろん、小編成~大編成でどの辺が得意か、単色と多色のどちらが良いかという部分もばらけさせることで組み合わせの多様化やユニットの特色という味付けをしつつ「記述は違うが実質同じ効果のカードでは…?」という印象を持たれないようにしました。
小編成はプロデュースユニットボーナスと流行2/3位を狙って複合で勝つパターン、大編成は流行1位ともう1戦取ってオーディションのみで勝つ、といったような方向性でしょうか。
どちらが強いというわけでもなく状況によって使い分ける必要がありますが、この辺を意識するとドラフトの際にも編成の指針の一つにできるのではないでしょうか。